Secret answer ~キミノトリコ~
「急いで帰ったと思ったら女の人と会ってるとか、奏くんやーらし」
「はぁ、目立つのはたいがいにしろよお前」
わりと対照的な様子の2人には、どちらにも見覚えがあった。

ふわふわの髪を揺らしながら、大きな瞳が印象的な人懐っこい笑顔を浮かべているのは…音くん。
少し長めの前髪から切れ長の瞳を覗かせて、ラフに首元を開けたシャツでさえなんだかおしゃれに着こなしている大人な彼は…たしか律さんだ。

「ほら、忘れ物」
ぽんっと投げられた袋に入った何かの荷物を片手でキャッチしたそーちゃん。
だけどもう一方の手はしっかりと私の腰に添えられたままだ。

「ところでその綺麗なおねーさん誰?」
一歩こちらに近づいた音くんに首を傾げるように見つめられ、思わずドキッとしてしまう。

「あ、私は…」
「奏くんの彼女ですか?」
「え!?違います!」
「なーんだ、そっかよかった」

よかった!?

「ねー律くん、おねーさんも一緒にどうかな?」
「まぁ奏の知り合いみたいだし…彼女本人がいいって言うなら」
「なに勝手に話進めてるんだよ、音」

なんのことを話しているのか全く見当もつかないまま、ただ周囲で交わされる会話の様子を眺めていると。

「おねーさん」
「え、はい?」
突然呼ばれた名前に、少しだけ間抜けな声が出た。

「僕、もうちょっとおねーさんと話したいなって思うんですけど…いいですか?」
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