傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う
お前を憎む理由
この世に自分が生きていることを一番憎んでいるのは、紛れもなく自分自身だった。



自分には特別な才能なんてないって、ずっと前から知っていたはずなのに。



「ユリの声に君のベースは合わない。君はそれほど技術があるわけじゃない。世の中には君くらいの能力なんていくらでもいる」



俺のずっとやってきたバンドが、メジャーデビューすると聞いたとき、社長から告げられた言葉。


「でも、ユリの声は違う。天から授けられたような宝物だ。君には外れてもらう」


心臓の鼓動が早く打ち、目の前にもやがかかったように、鈍い鉛色のような景色が目の前に一気に広がる。



『お前には何もないんだ。必ずお前に与えてやった仕事の道を踏みにじるなら、後悔する時がくるぞ。きっと生き
てはいけなくなる』



おれはその時、縁を切った育ての親に言われた言葉を思い出した。




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