傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う
『中途半端』


耳が腐りそうなほど周りから言われてきた言葉。二度とそう言われたくなくて、ずっと俺は今まで必死にやってきた。


『何のために歌うのか…』

『何のために今までやってきた』


まるで、今のあいつが過去の自分の姿と重なってしまって、思いもしていなかった言葉が口から出てきた。


「前言ってただろ。歌手になることが、大勢の人に憧れられる自分にとって運命の仕事だと思ったって。あの女より絶対に国民がひれ伏すくらいに有名になるって言葉は嘘だったのか?」


「うんう…」


「たとえ、世間から何か言われようと、それを跳ね返せるくらいの強さをお前は持ってるだろ。この一年何言われようと、その負けん気の性格で歌い続けてた」


あいつが嫌いな理由の一つは、俺には持っていない打たれ強さだった。


でも、それが一方で羨ましくて。



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