傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う
1時間経つと、あいつのテーブルの周りにはビールジョッキが無数に置かれて、あいつの目が据わり始めた。


「おい、そろそろ限界だろお前…もうやめろ」


隣にいて、近くにあるジョッキを座りながら飲もうとしたあいつの手をつかみ、止めた。


「んー?………あ?あーアサトだー?」


あいつは俺の手をつかみ、猫なで声を出し、甘えるようにそのまま寄りかかろうとした。


「近づくな」


そういって、俺はそれをよけた。


「またそういって私を避ける!!いつもそう!!」


酒のせいで、力が強いのか俺の両腕をつかみ、一向に離さない。


「今日は絶対に離さないんだからね!!」



「ねぇ、信さん聞いてくれる?アサトってね、私のこと嫌いなの」


隣の今日初めて知り合った初老のスタッフにいきなり親しげに話しかけている。



「えー?そうなの?ユリちゃん彼氏いないの?じゃあ、俺と付き合うか?」


「ごめん無理。10年私年上だったら考えてたけどー。でも嬉しい!ありがとう」


「こんな良い子を嫌いだなんて、アサトちゃん罰当たるよ」


「ねー!?もっと言ってやってー」


そう言って、ユリと二人でうざったく絡んでくる。


「こんなに私は仲良くなりたいのに…私…私どうしたら…」


そして、泣き上戸になり、お酒をまたつかみ出した。


「わかったから、もう酒はやめろ」


俺は再びあいつの手を止める。





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