傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う
足元がおぼつかないあいつを見守るため、あいつの行きたいように一緒に夜の公園を歩いた。


「アサトと二人でこれるなんて…もしかして私をデートにずっと前から誘いたかったんでしょ?」

「なわけないだろ…」

「そんな照れなくていいのよ。こんな夜景の綺麗なところに私を連れてくなんて、デートしたかったとしか思えないわーー!!」


あいつの生まれ持った、この楽天的な勘違いを見習いたい。


「お前の酔いをさますためだ」


「へ?私、そんな酔ってないよー」


夏だから、風も酔いを完全に醒ますほどに冷たくなくて、ただただあいつはテンションが高いままだった。


「私ユリ。このうれしい想いを音楽にのせて歌いまーーーす」


一人公園の真ん中で歩きながら、くるくるとバレエのように回り踊り、大声で叫びながら歌う。


偶然にも人がいなかったからよかったものの、不審者として通報されるのではないかと俺はハラハラしていた。


酔っている自覚が無いにもほどがある。あきれて何もものがいえなかった。



「はら…だんだん眠くなってきちゃった…」


そういうと、あいつの体が左右に揺れ始めた。


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