傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う
この時はあいつも俺も何も知らずに、ただ普通に笑って話していられた。


いつの間にか、あいつがごく普通のバンドの同志、大事な仲間の一人になっていて。


ずっと恨みに恨んで、邪魔でしょうがなかったあいつに対しての思いが薄れていた。


でも、決められた運命のようなものからは避けられてなくて、あいつがきっかけですべての計画は崩れ始めて、その結果、思いもしない方向に人生が転がるとは、この時は想像だにしていなかった。


『どうして…どうしてこんな体になるまで続けてるの…?手術受ければ治るんでしょう?』

『お前には関係ない…』

『世の中にはね、生きたくても生きれない人だっているんだよ。アサトは生きれる可能性がちゃんとあるのに、なんで生きるために努力しようとしないの?おかしいよ!!』

『生きることの何が大切だっていうんだ?教えろよ…稼ぐ能力のない人間が、生き伸びてなんになるんだよ!!』

『……私は…そんなんじゃ…』


『お前には分からないだろ。家族にも、友達にも愛されて、類い希な才能まで持って、全て思い通りに生きてきたお前なんかに。お前がずっと羨ましかった…。お前みたいに正論ぶつけて、気楽に考えて生きているやつを見ると、自分のことが憎くてたまらなくなってくる…』


病気のことが事務所全てに明るみになった時、俺はあいつを含めたメンバーの思いも、自分自身も、何もかも受け入れられずに悪態をついた。


心配して、正論をぶつけてきたあいつに、思わず全ての本音をぶちまけ。


その場から立ち上げれなくなるほどに、あいつを傷つけた。


もう二度と、あいつとは笑いながら話すことはできないほどに。



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