傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う
登也も含めて、みんな言う。あの女の生まれながらの才能を。


立っているだけでも華やかなスターのような圧倒的なオーラを放ち、音を自由自在に操る。


曲を何色にも染め上げる表現力。花火のように、パンチの利いた高い声。


しゃべるときの甘ったるい声も、オーバーで自信満々な動作もすべてが気に食わなかった。


どうしてこの世の中には、挫折も苦労も知らず、幸せいっぱいに生きているやつがいるんだろうか。


その笑顔も、自信もすべて打ち壊したくなる。


「ねえ、どうしてそんなにいつも練習ばっかりなの?よく飽きないよね」


努力もせずに、もともと生まれつきの才能を持ったやつに、言われたくない。


色目を使って、誰の心でもつかもうとするやつ。本当に目障りだ。


けれど、この場所を守るためには、この女さえも利用しなきゃならない。


必要あれば、その女を身を挺してでも守らなくてはいけない。


すべては、この居場所を守るために。
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