傷つけたいほどに憎み、輝く君を思う

好きを利用する

デビューして5か月、ようやくバンドのランキングも安定してきた。



色々と小さな事件はあったが、メンバーやスタッフに助けられて、どうにか乗り越えてこれた。



仕事自体は何もなく平和な時が続いていたのに、あの女はなぜか知らないが、俺につきまとうようになった。



『ねえ!今日もうスタジオリハ終わったし、ご飯行かない?』



必ず、あいつは俺の顔を上目遣いで見て、仕事で一緒のたびに何かと誘ってくる。


「今度さ…一緒に映画行かない?実はチケット2枚あってさ…」

「そんな暇はない。お前、そんなことしてる暇あったら、練習しろよ」


そう断り、いつも俺はプライベートでは関わらないようにしていた。


それでも、あいつは神経が図太い。

向かい合わせで座った時には、たまにニヤニヤした顔を向けられたり、じっと見つめられて非常に不愉快だった。


「お前とプライベート以外で会う気はない」

「いつもいつも断って、そんなに仕事が好きなら、仕事と結婚すればいいよ!もう!」


あいつの赤い頬がふくれっ面になり、ギャーギャーとよく反論してくる。

まるで、子どものような単純な性格をした女で。
物事を深く考えない楽天家。

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