偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
♧元彼♧
「さぁっ、スマホをお貸しっ!」
隣のテーブルから「女王様」のような声が飛んできた。
思わず、一人を除いた三人が「女王様」の方を向く。
もちろん、除いた一人は青山だ。
背中合わせで繰り広げられていることには、まったく関心がないようだ。
「……みっともない。ガン見するな」
氷点下の表情と口調は、決して崩さない。
シーザーサラダとハーブ風ローストチキンを黙々と食べていた。
シーザーサラダの方が先だ。彼はベジファーストを実践しているのだ。
「『やや』っていう名前なんだ……かわいい名前だなぁ……どんな漢字なんだろ?……名字はなんていうのかな?」
山口がぶつぶつとつぶやいている。
確かに『お料理を食べながら、お隣の話に聞き耳を立てていればいいんじゃない?』と麻琴は言ったが……
いざ「実践」しているのを見るとさすがに鳥肌が立った。ストーカーじみていて……キモい。