偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
ちょうどそのとき、麻琴が通りかかった。
稍は呼び止めて、青山から頼まれていた麻琴にも関連するデータを、連休前の今日中にまとめることを伝えた。
「……あ、ほんと?ありがとう。よかった、助かるわ」
麻琴は華やかな笑顔でお礼を言った。
「それでねぇ……派遣の更新の件なんだけど。
あなた本当に、うちを続けてくれないの?」
麻琴は懇願するように稍を見つめる。
「これだけの期間で、ここまでやってくれる人って、ほんと貴重なのよ。
もし、時給の件なんかで派遣会社と折り合いがつかないのなら、魚住課長とか上の人に掛け合ってもいいのよ?あなたなら、嘱託って形での直接雇用も無理じゃないと思うんだけど」
……あぁ、願ってもない話だ。
あいつさえこの会社いなかったら、一も二もなく飛びつくのに。
稍は心の中で歯ぎしりした。
だが、しかし……
「ありがとうございます……でも、遠慮しておきます」
麻琴には「お気遣いいただいて…」と深々と頭を下げた。