偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「……なにをボーッとしている。その調子だと、今日中に間に合わないぞ」
いつの間にか、席を外していた青山が戻ってきていた。麻琴はすでに業務に戻っている。
今ではすっかり慣れてしまったが、相変わらず青山がどこのテーブルにいようと、その右隣が稍の「指定席」となった。
稍が左に座ろうとすると「違和感がある。気持ち悪い」と言ってイヤな顔をされた。
……そういえば、昔から妙に神経質なところがあるヤツだったな。
だが、青山にPCでデータなどの確認をしてもらう際に、稍の背中をすっぽり覆うように腕を回して、マウスを扱うのだけは閉口した。
特に、近いとふわっと香ってくる、ホワイトムスクのフレグランスがヤバい。
……いやいやいや、別にヤバくはないけれども。
「す…すいません」
稍はいつものように青山の右側に戻り、PCに向かって作業を再開した。
……うるっさいなぁっ。いつも定時には、ちゃんと仕上げてるじゃんっ。
心の中だけで、思いっきり青山の悪態を吐く。