偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「……連休明けにある新商品のプレゼン資料、もうほとんどできてるか?」
タブレットに目を落としたまま、青山が聞いてきた。
「は…はい。だいたいは」
稍もまた、PCから目を離さず答えた。
これが二人の「通常運転」だった。
「そのデータのまとめ、何時くらいには終われそうだ?」
……今朝は「今日中でいい」って言ってなかったっけ?だから、麻琴さんにもそう伝えたってのに。
稍は思わず、チッ、と舌打ちしそうになる。
ちょっと、余裕そうに見せるとすぐこれだ。
まだなにか、させたいことがあるのだろう。
……これがあたりまえだと思ったら、大間違いなんだからね?あたしの後任のハケンさんは大変だろうなぁ。
今度はため息を吐きたくなった。
「何時頃、終われるんだ?」
青山が不機嫌そうにもう一度訊く。
「そうですね……定時の一時間前くらいには、なんとか」
稍は手首のエルメスのクリッパーを見ながら、渋々答える。
……あぁーあ、絶対に、また仕事が増えるぅ。
それでも、青山は派遣の稍には絶対に残業はさせないのだが。