偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

リムレスのレンズの奥にある鋭い切れ長の目が、稍を忌々しげに射抜いている。

「ほんで、その数十分後に()うたときには、なぜかおまえが、そないな、けったいな格好になっとったけどな」

だが、ふとそのとき、その鋭い目に暗い(かげ)りが迷い込んだように見えた。

「稍、おまえ……そんなにおれと会いとうなかったんか?」

その目で、じっと見つめられる。

稍は気弱に、ふるふるふる、と首を左右に振るしかなかった。

でも、やっぱり……

会いたくなかった、が真実なんだけれども。

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