偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
茫然自失する稍に、青山は追い打ちをかける。
「なにが『八木 梢』や。会社に『偽名』使いやがって。わが社の就業規則および服務規程に抵触するからな。もちろん、派遣契約してる先ともどうなるかな? 覚悟しとけよ。
それに、このIDカードは会社が税務署や地方自治体に提出する給与支払報告書とかに連動してんねんぞ。おまえは公的機関までも欺いてることになるな」
「えぇーっ⁉︎ せやけど、そもそも間違うたんは、そっちの会社やんかぁーっ!」
稍は泣きそうになりながら、首にかけられたネームホルダーを持ち上げ、IDカードを見せる。
「騒ぐな。やかまし。黙れ」
青山にぴしゃり、と制される。
「おまえ、小学生の頃、しょっちゅう『梢』って間違われとったがな。記憶力のええおれが忘れたとでも思ったか、アホ。
だいたい、誤発行されたことに気づいた時点で申し出るのが、社会人としての常識やろうが」
ちらりとカードを見た青山は、にべもなく言い放つ。
「そんなぁ……どうせ三ヶ月だけの契約やねんから、あと二ヶ月くらい見逃してよっ。
派遣登録して初めての会社と揉めた上に切られたりしたら……もう仕事来ぃひんようになるやんかぁ。そしたら、生活していかれへん」
稍は手を擦り合わせて懇願する。
「知るか、自業自得やろ」
稍はやり切れないながらも、青山の言うことがいちいち正論なので、やり込められる。
「それに……渡辺が怪しんどったからな。
このまま働いても、バレるのは時間の問題やぞ」
……ええぇっ⁉︎ あの親切な麻琴さんがっ⁉︎