偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「……あら、あなたが今日からのハケンさんね。うちのチームにもやっと入ったのね」
稍は「光」がやってきた、と思った。
確かに、大きな窓を背にして颯爽と歩く姿は逆光を背にしてはいたが、それだけではない。
アイシーブルーのトップスとスカンツのセットアップを身に纏って目の前に現れた女性は、とにかく顔立ちもスタイルも抜群に美しかった。
無理に若づくりする様子がまったくないため、年相応の外見だと思う。三十歳前後であろうか。
また、身長一六〇センチの稍よりさらに五センチ以上高そうだ。グレージュの柔らかなウェーブのロングヘアを、後ろでふんわりとバレッタで留めている。稍の引っ詰め髪とは雲泥の差だ。
「あ、麻琴さん」
山口がタブレットから顔を上げて、にっこりと微笑んだ。自分の心に忠実すぎる人だ。
「気をつけてね。山口くんは社内一のモテ男だから。迂闊に仲よさそうにしてると、いつの間にか女子社員たちからハブられるわよ」
「麻琴さんっ!」
山口が苦虫を噛み潰したような顔になった。
朝から表情が忙しい人だ。