偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「よろしくね、渡辺(わたなべ) 麻琴です。
プロダクトデザインなど商品開発の担当よ。
遠慮しないで名字じゃなくて名前で呼んでね。みんなにそう呼んでもらってるから。
年齢は聞かないでちょうだい。入社してもう12年目よ。アラサーなんて言えない歳にさしかかってるの」

麻琴は、ふふっ、と笑った。

「……そんなの自分の方こそです。たぶん、渡辺さん……麻琴さんの一つ歳上です。
八木 梢と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」

稍は先程山口にした、三〇度のお辞儀をした。

「あらっ、ずいぶん綺麗なお辞儀をするのねぇ」

山口と違ってちゃんと見てくれた麻琴が、感心して言った。ちなみに、山口はもうこちらを完全に無視ってタブレットに専念している。

「前職がサービス業の会社だったので」

「あら、じゃあ、事務関係の書類なんかは苦手?」

「大丈夫です。新卒で入社して以来、ずっと事務職をやってましたんで」

「そうなんだ、よかった」

麻琴はホッとした表情を見せた。それがまた、同性の稍の目から見てすら、愛らしい。
綺麗なのにかわいらしい人だ。

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