偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「お邪魔しま…す」

稍は、まず顔だけドアの中に入れた。

……だれもいない。

次に、ゆったりとしたスペースが確保された玄関に足を踏み入れた。

「……スリッパを履いて、廊下の突き当たりまで来い」

まっすぐに伸びた廊下の奥から、青山の声が聞こえてきた。

稍は、今の服に合わせて選んだヒールのほとんどないバレエシューズを脱いで、玄関の大理石の部分と段差のない幅広のフローリングの廊下に置かれていたスリッパに履き替えた。

とりあえず、スーツケースとキャリーバッグは玄関先に置いておいて、言われたとおりに廊下の突き当たりへと進む。

「……入ってこい」

そして、たぶんリビングへと続くだろうと思われる、木目が美しいダークブラウンのドアを開けた。

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