偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「おい、どうした? 稍、ぼぉーっとすんな」

智史が、これでもかというくらいに顔を(しか)めていた。口調が戻っている。

「まさか……あのアホな男のことでも思い出してるんとちゃうやろな?」

そう(うめ)くように言ったかと思えば、いきなり「ガキみたいな甘っちょろい」のとは、対極のキスを頭上から落としてきた。

智史のくちびるが力強く、稍のくちびるに吸いついてくる。

「……ぅんっ……」

咄嗟(とっさ)のことに、稍はしっかりと智史のくちびるを受け止めてしまう。

そのまま、だんだんと興が乗ってくる。

角度を変えながら、ひとしきり互いのくちびるを重ね合わせる。

静かな部屋に、二人のくちびるが触れるときだけに放つ音が響いた。

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