偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「神戸に帰ったら……(しおり)に、会えるかな?」

智史の表情が急に和らいだ。
心なしか、はにかんでいるように見える。

「一人っ子」として育った智史にとって、血の通った妹は、栞だけだ。

稍は、智史の鼻筋の通った横顔に、栞の面影を見た。

「うちのおとうさんは神戸に戻らはったけど、栞はまだ京都やねん」

稍は父親が栞の小学校からの親友と再婚する話をした。

「……去年、ずぅーっと別居してたおかあさんといきなり離婚しはったのは、その子と再婚したかったからみたいやわ」

三十歳以上もの歳の離れた相手との再婚である。なにかと「世間」が(かしま)しい京都市内の町家を手放して、かつて住んでいた神戸に戻ったのもそのためだ。すでに祖父母は他界していた。

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