偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
♧演技♧
それから稍も智史も、無言で黙々と部屋を片付けている。
そんな中、稍はふと気づいた。
リビングの足の踏み場もない惨状の「正体」は、衣類以外では仕事の書類に郵便物、そして経済関係の雑誌やシステム関連の書籍などであった。
「……わかったえ、智くん」
謎を解く私立探偵のように、稍は頭上から人差し指を振り下ろした。
「収納する場所がないから、こんなふうになんねやっ!」
この家には確かにリビング以外に造り付けの収納スペースがあったが、智史の持ち物に対して比例していないことは明らかであった。
にもかかわらず、それらを「補完」するためのチェストや本棚などの家具類が、一切ないのだ。
「あぁ……わかっとる。 人のこと指差すな。失敬な。せやけど、寝室には置きたないし、リビングはソファとかが幅取っとるしなぁ」
智史が腕を組んで、渋面でごちる。
「そしたら物置にしてる、あの部屋にまとめて置いたらええやん」
稍は胸を張って提案した。
「……なるほど。おまえ、エラいなぁ。ほな、早速買いに行こか」
めずらしく智史に褒めてもらい、稍は気をよくして、にこっと微笑んだ。