偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
家に帰ってきたら、また片付けがはじまった。
でも、散乱したリビングは今日中になんとかなりそうだ。
智史が「物置部屋」へ、本棚が届いたら収納する予定の書籍や雑誌を運んていく。
衣類の方は、クリーニングに出す方は明日にでもコンシェルジュに渡し(高級マンションはなんて便利なんだろうと、ど庶民の稍はしみじみ感じた)、家で洗濯できるものは今ドラム式洗濯機が全力で洗ってくれている。
そして、一番厄介だと思っていた「水回り」であるが、智史は料理をせず外食かコンビニ弁当の不摂生極まる食生活であるため、キッチンはほとんど使われていなかった。
また、ジムやランニングステーションでシャワーを済ませてくることが多いらしく、バスルームもキレイであった。
来たときはどれだけかかるかと気が遠くなりそうだったが、いざ不要なものを片付けてみると、智史の部屋は必要最低限の家具しかなく、至ってシンプルだった。
……この状態をキープしてもらわんとなぁ。
ショールームへ行く前に智史が「寿司を腹いっぱい食わせたる」と言うから、テンション上げてついて行ったら、四千円ほどで食べ放題の寿司屋だった。
稍が、セコくない?という目で智史をじとっ、と見ると「まぁ、食うてみろ」と顎でくいっと促された。
食べ放題とはいえ、寿司職人が目の前で握ってくれる本格的な寿司だ。一口食べてみると「美味しい」と思わず声が漏れた。
智史が「築地に本店があって、ここは出店や」と言って、得意げになった少年のように笑った。
レインボーブリッジが眼前に広がっていて、雰囲気もよかった。
だから……思わず食べ過ぎてしまった。
「夜は軽く『引っ越し蕎麦』でええかな?」
稍は冷蔵庫の中を見てつぶやいた。