偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
Chapter7
♧偽装♧
朝、目覚めると、稍の隣に智史はいなかった。
昨夜は……
『無理無理無理ぃーっ!絶対無理やぁっ!智くんが隣やなんて、絶対寝られへんもんっ!』
『おまえ『居候』の分際で失敬なヤツやなっ⁉︎
ほんなら、おまえは「家主」のおれに「リビングで寝ろっ!」って言うんか⁉︎ ボケっ!』
お互い口汚く罵り合うすったもんだの末、同じベッドで眠ったはずなのに……
智史の言うとおり、十帖ほどある寝室には壁に寄せられたベッド以外にはなにも置いてなかった。エアコンですらベッドから一番遠い壁に取り付けてあった。
ベッドの壁際半分を「陣地」にした稍は、くるりと背を向けた。
『……おれかって、ええ歳や。もう若くもないしな。誰彼なしにヤるわけないやろが。
ちゃんとおまえとの「合意」の上の「同意」があってからや。それこそ失敬な話やぞ。
……おい、稍、聞いてんのか?
……おまえ、まさか……』
稍からは「子どもの気配」が漂っていた。
到底、寝られへんっ!と思っていたが、智史の低く落ち着いた声を聞いているうちに……稍は、すぅーっと眠りに落ちていった。
長かった「激動」の一日に、身体の方は思った以上に疲れていたようだ。
『ウソやろ?……速攻で寝てやがるやんけっ。
なにが「智くんの隣は無理や」っちゅーとんねん。ふざけんなっ、シバくぞっ、襲うぞっ』
隣ですぐに始まった寝息に、智史は呆れ果てた。
だが、そのとき、稍が寝返りをうってこちらを向いた。すっぴんで、子どもの頃に見たのと同じあどけない寝顔に、智史は思わず苦笑する。
そして、稍の身体にそっとブランケットをかけ直してやった。
その後、ヘッドボードのリモコンで部屋の灯りを消し、やがて自分も静かに目を閉じた。