偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
稍が不安げな顔で、ぱたぱたとリビングにやってきた。七分丈のベルスリーブに、膝上のブルームスカートになったライラック色のワンピを着ている。
「智くーん、この服で本当に大丈夫?
智くんとこのおばちゃん、デパートのバイヤーしてはったやろ?」
……念のために、オフホワイトのプラットホームのヒールも持ってきてんけど。
「やっぱし、おばちゃんとこのデパートで揃えてから会うた方がいいかなぁ?」
ますます顔を曇らせる稍に、
「落ち着け……ちょっと、ここに座れ」
そう言って、智史はカウチソファの隣に促した。稍が素直に、すとん、と座る。
「……稍」
智史が手を伸ばして、稍の腕を取って手元に引いた。
それでなくても、つるっつるの革張りで、ふかっふかのソファはバランスが取りづらい。
稍はすっぽりと智史の腕の中に入ってしまった。
「……智くん?」
稍が上目遣いで、智史の顔を見上げる。
智史が子どもの頃のように、人懐っこい笑顔になった。