偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
だけど、いつまでも躊躇しているわけにはいかない。
そのとき、ふと、稍の目に止まったリングがあった。
ティファニー・セッティングの隣に、それはあった。真ん中の大きなダイヤモンドの両側が、くびれて細くなったデザインなのに、そのぷっくりした曲線のアームが愛らしい。それに、なんだか、やけにダイヤが大きく見える。
気がつくと、稍はそのリングを手にして指につけていた。
「どうぞ、こちらの鏡に映してごらんください。周りの方からの目線で見られますよ」
店員のお姉さんが角度を合わせてくれた鏡を見ると、稍の細長い指にそのリングがよく映えていた。
「……そちらはハーモニーでございます。
二〇一二年に発売された比較的新しいデザインなのですが、ティファニー・セッティングよりダイヤの高さを抑えてあるため普段遣いしやすいと、たいへん好評をいただいておりまして、今や新定番でございます。そもそも、発売当初は日本限定販売でしたので、日本の方にたいへん人気がございます」
店員のお姉さんがにっこりと説明してくれる。