偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「それから、マリッジリングの方には刻印される方が多いんですけれども、いかがいたしましょうか?」
……そ、そんなこと、突然言われても。
「挙式日か入籍日かを入れるのが定番らしいけどさ、おまえら結婚式いつ?」
小笠原がニヤニヤ笑いながら訊く。
……そ、そんなこと、突然言われても。
「あぁ、詳しいことはまだ、なにも決まってないんだ。連休明けは、おれの仕事も忙しくなるからな」
智史がしれっと答える。
「でも、結婚式はするんだろ?」
小笠原がニヤニヤ笑いながら訊く。
……するわけ、ないやん。「偽装結婚」やねんから。
「あぁ、するよ」
智史がしれっと答える。
「……って言っても、会社の気の置けない連中や友達を集めてのウェディングパーティみたいなもんになるけどな。うちの従兄がやったような堅苦しくないヤツな」
……はあああぁっ⁉︎
「ややちゃんがキレイだから、おまえお披露目したいんだろ?」
小笠原が呆れた目で智史を見る。
「ふん、司会くらいしてやるぜ。会場の手配も任せろ……あ、ややちゃん、ウェディングドレスの店とか紹介するから、いつでも言ってよ」
そう言って、プライベート用のスマホをポケットから出してLINE交換しようとする。
それを遮るように「挙式日も入籍日もまだ未定なので」智史が店員のお姉さんに告げた。
「では、本日より半年以内であれば無料で刻印させていただきますので、お決まり次第ご足労ですがお持ちくださいませ。なお、できあがりまでに、二週間ほどかかりますのでご了承ください」
稍はとりあえず、こくこくっと肯いておいた。
「それでは、お包みいたしますね」
店員のお姉さんが立ち上がった。
「あ、婚約指輪は、このままつけさせますので」
智史がそう言いながら支払いのカードを渡すと、
「かしこまりました。それでは、婚約指輪の方はクリーニングさせていただいてからお渡ししますね。結婚指輪の方はお包みいたします」
店員のお姉さんが、カードを受け取りながら答えた。
「あ……僕の担当で『外商』に回しといてね」
「従販」は小笠原の冗談だった。
稍は改めて、総額いくらだったんだろう?と考えると、小笠原ではないけれど脈を取って不正脈が出てないか確かめたかった。
……三割引にしてもらえて、本当によかった。