偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


「ややちゃん、本当(ほんま)に指輪似合ってるよー。そのエルメスの時計にも()うてるしね」

ティファニーを出て、小笠原に「関西弁」が戻ってきた。

稍の左手薬指には、クリーニングされてさらにぴかぴかになった〇・八八カラットのハーモニーがしっかりと収まっていた。

へへへ…と、稍の頬が緩みっぱなしだ。

「稍、こいつの話なんか聞き流せ。返事することはない」

……外商扱いにしてくれたというのに、恩知らずやなぁ。

稍は智史とつないだ右手を、くいくいっ、と引っ張る。

結局、ティファニーを出たらまた「恋人つなぎ」の刑に処せられている。
呆れ果てた小笠原は、もうなにも言わなかった。

「ややちゃんの決断が早いから助かるわ。
……でも、カルティエとかブルガリとか、ほかの店に行かんくてよかったんかな?」

稍はぶんぶんぶん、と首を振る。

「偽装結婚」だというのに、元婚約者からもらって突っ返した「本気のエンゲージリング」よりも遥かに気に入ったし、なによりうれしい。
このまま、ずーっと見ていたくなる。

……なんでやろ?

稍は首を(かし)げた。


「……青山、次は『服と靴とカバン』やっけ?」

「おう、神戸に帰って挨拶せんとあかんからな」

< 277 / 606 >

この作品をシェア

pagetop