偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
智史はその後も稍が食べる炭火焼きとりを、
「新しいのを食べたらええやーんっ」
という稍の叫び声をものともせず、途中で奪っていった。
絶望に駆られた稍は、天沼から「連れてきた」無印の体にフィットするソファ・ミニサイズに突っ伏した。やはり、どんなときも傷心の稍を受け止めてくれる。
しばらく打ちひしがれていたが、最後に大好物を残していたのを忘れていた。
稍は好きなものは最後に食べる派だった。
ハラミタレだ。
一本だけ、売れ残っていたものだ。
……もも塩も、かわ塩も、かわタレも、ももタレも、途中で奪われたけどっ。
ハラミタレだけは、死守してやるっ!
稍はあわてて、がばっ、と起き上がる。
しかし、惨劇はすでに始まっていた。
智史がそのハラミタレを頬張っていたのだ。
……今まで、あたしが手ぇつけたヤツしか食べへんかったやーんっ⁉︎
「なんやこれ、めっちゃ旨いやんけ」
感嘆の声を発したと思ったら、智史がハラミタレの最後の断片を口の中に入れた。
「あ…あああぁ……っ⁉︎」
稍はすぐに手を伸ばしたが、もう遅かった。