偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

すると、待ってましたとばかりに、智史に抱きすくめられる。そのまま、無印のソファの上に押し倒された。

このクッションソファは別名「人をダメにするソファ」と呼ばれている。一度寝転がると起き上がるのに困難な代物になるためだ。
もちろん快適だという理由もあるが、実は起き上がるときにかなりの腹筋を要するのだ。
ましてや、大の男にのしかかられては、起き上がれるはずもない。

稍は初めてこのソファに「裏切られた」。

あんなに全幅の信頼を傾けていたというのに……今や無印のソファは、智史の方に味方していた。

「稍……そんなに食べたかったんやったら、ハラミタレを味合わせたるわ」

智史の端正な顔が近づいてくる。
行動はまったく「端正」ではないけれど。

「いやいやいや……タレの味は、ももタレやかわタレと一緒やから」

稍は顔を(そむ)けて(あらが)った。

しかし、稍の頬が智史の大きな手のひらによってがっちりと「固定」された。
そして、智史のくちびるが稍のくちびるに触れた、と思ったら……

たちまちのうちに、稍の方が食べられるかと思うくらい、激しいキスが始まった。


……万事休す、や。

もう、稍には抗えない。全身の力が抜けた。

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