偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

……ヤバい、ヤバい。また、流されるところやった。

稍は気を引き締めた。

他人(ひと)の振りは見てみるものだ」が新たな稍のポリシーに加わった。

廊下ですれ違いざま、智史に口パクで「寝」「る」と告げる。

すると、智史がギョッとした顔になった。
どうやら「青天の霹靂」らしい。

普段は憎たらしいくらい鉄仮面のヤツでも、据え膳を喰らう前にいきなり取り上げられたらこんな顔になるんだ、と思うとおかしくなってきた。

しかし、スマホの向こうではまだ麻琴がなにか話している。

「……だから、麻琴……それは……」

すぐに稍から背を向けて、話を再開させている。

……ふーん、あたしが通りかかっても、切らんとまだ話し続けるんや。

稍は気づいていなかったが、その顔は般若の面のように怖ろしい形相をしていた。
智史がギョッとした顔になったのには、そのせいでもあったのだ。

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