偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
智史は神戸でレンタカーを借りる手配をしていた。新卒で入った会社のハイブリッドカーだった。
「智くん、TOMITAで働いててんやろ?」
助手席に座った稍は、シートベルトを締めながら尋ねた。
「なんで知ってんねん?」
智史が意外そうな顔をしながら、エンジンのスイッチを押す。
「……麻琴さんから、聞いた」
その名を口にするとき、なぜか稍の心が、いがっ、とした。
「ええ会社やのに、なんで辞めたん?」
なんといっても「世界のTOMITA」という超優良企業である。
「おまえかって、新卒で入社した大手の証券会社辞めとるやんけ」
智史がハンドルを回しながら苦笑した。
車は外の道に出るところだ。
「なんで知ってんのん?……あっ、履歴書か」
稍はやっと気がついた。
「上司」であった智史が派遣社員の稍の経歴を知らないわけがない。
本当に……初日からバレバレだったのだ。