偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
Chapter2
♧再婚♧
「はぁ……今日は疲れた……」
天沼の1Kの一人暮らしのマンションに帰るなり、稍はなだれ込むように無印の「体にフィットするソファ・ミニサイズ」の上に身を預けた。
メトロの茅場町付近だった前の会社とは、倍くらいの通勤時間になった。
青山チームだけでなくステーショナリーネットに勤務する人たちはみんな、ゆりかもめ沿線の「島内」に住んでいると麻琴から聞いた。
それだけ残業が多いということだ。
チームリーダーの青山は運動不足解消のためランニングステーションのある「有明テニスの森」に、麻琴は「港区台場」の住所にこだわって「お台場海浜公園」に、山口は「島内」では単身者用のマンションが比較的多い「豊洲」に、そして妻子持ちの魚住課長とサブリーダーの石井は最近ファミリー層に人気の「東雲」に居を構えているらしい。
稍は駅前のローソンで買ってきた今夜の夕飯を、だるい身体でローテーブルに置いた。
といっても、食欲がないため「八種野菜と豆のミネストローネ」だけである。
つい買ってしまったローソン限定販売の「氷結ZERO SEVEN シチリア産レモンライム」のプルトップを引き抜く。グラスを取りに行く気力もないので、缶のままビールのようにくぅーっと呑む。
「……ぁあ、おいしぃ……」
一人きりなのに、思わず声が漏れた。
「あ、ミネストローネ温めなきゃ」
ソファから立ち上がろうとしたそのとき、通勤用のコーチのサッチェルバッグから、スマホのバイブ音がした。
スマホのディスプレイには「栞」と出ていた。
たった一人の妹の名前だ。