偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「えっ、い、いいのか?」

智史の顔がぱあぁっと明るくなる。

速攻で稍は撒き散らした塩を回収したくなった。
やけっぱちで智史に「ほれっ」とスマホを渡す。

『……えっ、うそっ……「智史」って、もしかして……なぁ、なんで、そこにいたはるん?』

栞にも、智史との「結婚」は知らせていなかった。

『……ほっ、本当(ほんま)に話すのん?
……こっ、心の準備がっ……』

スマホの向こうでは、いきなりのことに栞がテンパっていた。

なんといっても、この兄妹が最後に会ったのは二十年以上も前なのだ。
栞に至っては、まだ乳幼児であった。

「……も、もしもし……」

低いはずの智史の声が、若干、上擦(うわず)った。

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