偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
年齢はもちろん、栞と同じ歳である。
栞は父親が三十二歳のときの子どもだ。
つまり、それが再婚相手との年齢差となる。
一生、増えもしなければ減りもしない。
栞はさらに衝撃的なことを告げた。
『結花のお腹の中には……赤ちゃんがおるねん』
……はああぁ!?
「な…なにやってんねやぁ……ええ歳してぇ……
自分の娘と同し歳の子に手ぇ出してぇ」
稍は思わず、呆れた声でつぶやいた。
とはいえ、栞も結花も、もう二十七歳だ。
しかも、ついこの前まで学生だった栞と違い、結花は大学を卒業したあと、就職しOLとして働いていた。ちゃんと社会に出て、その中で知り合った男性もいただろう。
けれど、生涯をともにする相手を、稍や栞の父親と決めたのだ。結婚だって、出産だって、全然早くもない。
なのに……やっぱり複雑だった。
「なぁ、結花ちゃんの親御さんはなんて言うてはるの?」
ショックなのは、むしろ結花の家族の方だと思った。
『特におっちゃんがめっちゃ怒らはった。「子どもなんか堕ろしてしまえ」って言われたって、結花は家出して、泣きながらうちにやってきてん』
「そしたら、今、三人で暮らしてんのん?」
稍が尋ねると、栞の声がくぐもった感じに変わった。
『う…ううん……あたしが、家を出たん』
「えっ?栞ちゃん……一人暮らししてんのん?」
母親がうちを出て行ってからは、稍が母親代わりとなって育てたようなものだった。
それでなくても、稍より八歳も歳下の妹はいくつになっても幼いイメージのままだ。
栞が一人で暮らして一人でなにもかもやっていると思ったら、稍の心がきゅーっと縮こまった。
「栞ちゃん、なんでもっと早う言うてくれへんかったん?」
……一人になんて、させへんかったのに。