偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
ポートアイランドから船が出る、前日の夕方。
稍と智史は運動場の奥にある裏山にいた。
山といっても丘程度の高さであったが、小学生たちはよくその麓で遊んでいた。
そこには戦時中に掘られた防空壕の跡があった。
もちろん、先生からは危ないから絶対に入ってはいけないと言われているため、近づいたりはしない。特に今は余震が続く中、いつ陥没するかわからない。
稍と智史は少し離れたところに腰を下ろした。
陽が落ちてきて、ダウンジャケットを着ていても寒さが増してきた。
二人は寄り添うように、ぴったりとくっついて座る。
しばらく、沈黙が続く。
あんなに毎日、他愛ないことをとりとめもなく、しゃべっていた二人なのに……
今は……なにを話していいのか、わからなかった。
「……ややちゃん」
智史が口火を切った。
「ぼく……転校しても、ややちゃんのこと、ずぅーっと思っとうから」
稍はしっかりと肯いた。
「うん……ややも……ずぅーっと、さとくんのこと思っとう。さとくんに、手紙書くし」
互いの母親たちがあんなに仲がいいのだ。
きっと、連絡先を知らせているだろう。
「ぼくも、手紙書く……ほんで、ときどき電話してもええか?
……ややちゃんの声、聞きたいから」
稍はぶんぶんぶんと勢いよく、首を縦に振った。
「ややもっ!ややも、さとくんに電話するっ。
さとくんの声、聞きたいもんっ」
二人は互いに顔を見合わせて、にっこり笑った。
けれど、その顔がだんだんと歪んできて、泣き顔になる。
泣きたくは、なかった。
だって、また会える日がきっと来るのだから……
聡にいちゃんのように、死んでしまって二度と会えないわけではないのだから……