偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

その日の晩、稍の父親の巧が避難所にやってきた。急遽、車を借りてきたのだ。

「……稍、京都のじいちゃんのとこへ行くぞ。ここを出る支度をするんや」

巧は急に母親の姿が見えなくなってむずかる栞を抱き上げ、沈痛な面持ちで告げた。

京都には巧の両親が住んでいたが、折り合いが悪くまったく帰省していなかった。
なので、稍も栞も祖父母には会ったことがなかった。

どうやら、みどりとの結婚の件で猛反対されたためらしい。


そして、巧は智史に向き直って言った。

「智史君、君を大阪のお母さんのところへ連れていってあげるから、君も支度をしなさい」

智史は、青ざめた顔でこくり、と肯いた。

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