偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
ということは……
言いようのない不安が、いつの間にか、心細さに変わっていた。
母親から置いていかれた「あのとき」の気持ちが甦るようだった。
……イヤや。
智くんにだけは、置いていかれとうない。
稍はかぶりを振った。
ハーブティーをあわてて飲み干して、紙コップをくしゃっ、と握って、近くのゴミ箱へ捨てた。
それから、すくっ、と立ち上がって、キャリーバッグのハンドルをしっかり持って、パウダールームを出た。
早く行ってどうなるわけでもないのに、稍は速足で先を急いだ。