偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

智史は立ち上がって、自分のゼロハリバートンのシルバーのキャリーバッグを座席の上の棚に乗せ、稍のオレンジのハンズプラスをその隣に置いた。

そして、借りてきたブランケットを稍に渡す。
グリーン車だけのサービスだ。

「あれ……稍、おまえ……目が赤いぞ。
それに、なんか鼻声やし」

智史がニヤリ、と笑った。

「そ…そんなこと、ないもんっ」

稍は(うつむ)いて、受け取ったブランケットをあわてて膝の上に広げた。

「そうか?」

智史が身を(かが)めて、稍の顔を覗き込む。
明らかにおもしろがっている。

睨むために顔を上げた稍と、目を落とした智史との視線がぶつかる。

智史の顔が近づいてくる。
稍が自然と目を閉じる。

二人のくちびるが出会った。

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