偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「稍さん、智史を末永くよろしくお願いします」

そう告げると、魚住はいきなり腰を垂直に折って、深々と(こうべ)を垂れた。


折られた腰から伸びる背筋は、まったくたわむことなく頭頂まで一直線だ。
まるで一枚の(ひのき)の板のようである。

身体(からだ)の両脇にきっちり沿わせた長い腕はもちろん、細くて長い指も、その爪の先までしっかりとまっすぐに伸びている。

直立不動の姿勢から振り下ろされたそれは、まさに「伝家の宝刀」だった。


なぜだろう……お辞儀をしているのに。
こんなに深く頭を下げているのに。

全然、卑屈さが感じられない。
いや、むしろ、威厳さえ感じさせる。

惚れ惚れするほど美しい「最敬礼」に、稍は見惚れた。

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