偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……おまえ、いつまでぼんやりしてんねん?」

青山が世にも不機嫌な声で唸っている。

「あの野郎……稍にまともに喰らわせやがって」

「すっ…すっごいやんっ、あの『お辞儀』っ!
めっちゃカッコよかったぁ〜♡」

頰を赤らめた稍は、まだ胸がどきどきしていた。

「アホか。あれがヤツの『専売特許』やんけ。
しくじった先であれをやれば『ただの取引先』が挽回どころか一気に『上得意先』に変わる『伝家の宝刀』や」

「なるほど〜」と、稍が深ーく肯いている。
青山の顔がさらに険しくなった。

「……さぁ、戻るぞ。連休明けで仕事は山積みや。おまえ、総務からとっととタブレットもらってこい」

そう言ってから意地悪く、にやり、と笑う。

「社内規定で『直接雇用』の嘱託は、自宅にタブレットを持って帰れるからな。派遣のときと同じく定時で帰らせたるが……これからは、家でも一緒に仕事できるようになるな」

とたんに稍がげんなりした顔になる。

……それって、サービス残業よりタチ悪いやんっ!

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