偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
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ミーティングルームから戻ると、石井がいた。

「話は聞いてるよ。えらく急な話でびっくりしたけど……あなたが、青山さんの奥さんになった人だってね?」

いつもはクールで我関せず、といったスタンスの石井だが、青山と稍を交互にちらちら見て、ニヤニヤしている。

「いつも主人がお世話になります。妻の稍です」

今日、何回このフレーズを言うんだろ、と思いながら稍は挨拶した。

「今日からこのチームで働くことになった。
同じ姓だと紛らわしいから、旧姓の『麻生』で呼んでくれ」

淡々と「業務連絡」を告げる青山に、石井は稍の首からかかったカードホルダーを覗き込んだ。

「へぇ、『稍』ってこんな漢字なんだ。
わかったよ……よろしくね、ややちゃん」

そして、全然わかってないところを披露した。
すぐさま石井は、青山から即凍死になりそうな視線を全身に受けることになった。

「こいつはおまえより歳上だ。旧姓で呼べ」

ところが、それをモノともしない石井は「提案」した。

「あぁ、魚住課長が『ややちゃん』って呼んでたから移っちゃったんだよ。課長の奥さんの後輩なんだって?」

石井は、にっこりと稍に微笑みかける。
稍は「はい」と肯いた。

「それから、ややちゃんの歓迎会をしなきゃね。今週は水曜日だと、みんな比較的早く終われるんじゃないのかな?」


実は、石井の妻の華絵が「別ルート」からこの話をすでに聞いていて、

『ええぇっ⁉︎ あの「鉄仮面」の青山さんが電撃結婚っ⁉︎ ちょっと、大貴、あんたちゃんと経緯(いきさつ)を聞いてきなさいよっ!
なんだったら、奥さんも一緒にうちに連れていらっしゃいっ!!』

と、夫に「厳命」したのだ。

愛する妻の願いは聞き入れねばならない。
それが「夫」というものだ。

ここにも「愛妻家」がいた。

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