偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「なんで、あなたまでここにいるんですか?
……大橋さん」

青山は顳顬(こめかみ)を押さえた。ずきずきと(うず)く。

「稍、この人は社長の奥様だ。結婚する前はTOMITAの秘書室にいたんだ」

創立記念パーティで息子と一緒に社長に寄り添っていた人だった。「大橋」は彼女の旧姓である。

「だって、あの『青山くん』が電撃結婚したって聞いたら、お相手がどんな人か見たいじゃん」

今日はそのためにわざわざ会社に来たのだ。

「あ……この度はご結婚おめでとうございます。葛城 誓子(ちかこ)です。これから、よろしくね」

丁寧に頭を下げられて、稍もあわててお辞儀する。相手は社長の奥様だ。

「こ、こちらこそ……妻の稍です。
奥様、これからよろしくお願いいたします」

そして、誓子は青山の方を向いた。

「そんな堅苦しくなくったっていいのよ?
誓子って呼んでちょうだい。
あっ、あとで写真撮るからね。それとも、動画(ムービー)にしようかな?
LA(ロス)将吾(しょうご)さんに送るよう言われてんのよ。彩乃もすっごく見たがってるの」

彼女はかなり砕けた口調だ。
稍は目を白黒させていた。

< 481 / 606 >

この作品をシェア

pagetop