偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
将吾とはTOMITAの副社長の富多 将吾で、富多 彩乃はその妻である。
婚約が決まったと同時に彩乃は富多副社長の専属秘書になったため、青山とも彼女とも一緒に働いていた同僚だった。
青山はTOMITAにいたとき、富多副社長の総指揮の下、システム関連の改革にあたる社外取締役の直属だったため、重役室に出入りすることが多かった。
改革が一段落したあと、青山が辞表を出したとき、富多副社長は全力で止めた。
その富多がアメリカ支社の技術開発部門を梃入れするためにロサンゼルスに赴任することも、青山がTOMITAを去ろうと思った理由の一つだ。
そこで、転職先のステーショナリーネットの葛城社長が富多副社長に直接会って、
『青山君を譲ってほしい』
と頼み込んだ。二人には面識があった。
『……葛城社長のとこなら仕方ないな』
富多副社長は渋々、青山を手放した。