偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
入ってきた青山と稍の顔を見るなり、社長の葛城は満面の笑みで言った。
「あぁ、青山君、待ちかねたよ。
この度は、結婚おめでとう。同時に奥さんまで、我が社のために働いてくれるなんて、本当にうれしいよ」
「社長」といっても、ようやく四十代に入ったばかりである。
若くして立ち上げた、今や文具だけでなく生活用品までも提供するようになった通販会社を率いるその姿は、堂々としていて精悍そのものだ。
経済誌やテレビの経済番組のオファーが絶えない。
彼に北欧家具と思われる、オシャレでありながら実用性もしっかり伴ったソファを勧められる。
その前に、青山が稍を隣に立つよう促した。
「社長、私ごとにお気遣いいただき、ありがとうございます。この度、突然ではありますが結婚しました……これが、妻の稍です」
「妻の稍と申します。この度は夫ともども、わたくしまでこの会社にお世話になることになり、ありがとうございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます」
二人同時にお辞儀する。
稍はずいぶん慣れてきたもんだなぁ、と自分自身に感心していた。
入籍する予定もない「偽装結婚」だということを、なんだか忘れてしまいそうだ。