偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「「……さ、さとくん……?」」
葛城夫妻は一瞬、マイナス一九六度以下の液体窒素をぶっかけられたみたいに瞬間冷凍され、カチンコチンに固まった。
二人とも、ありえないものを見るかのごとく驚愕の表情を浮かべている。
だが、次の瞬間、一気に温度が上昇し、沸点をぶっ超えて大爆笑し始めた。
真っ白な煙のような蒸気が、もくもくと溢れ出すさまが見えるようだった。
「やぁっだー、青山、あんたっ、『さとくん』って呼ばれてんのぉーっ⁉︎」
今までがんばって「青山くん」と呼んでいたのに、すっかりTOMITA時代に戻ってしまった。
「ち…誓子さん……そんなに笑っちゃダメだよ……」
そういう社長がお腹を抱えて、ヒィヒィ笑っている。
またもや、視線だけで人の息の根を止めるかのような凄まじさで、稍は青山から睨まれた。
青山は、稍から「さとくん」と呼ばれていることを死んでも知られたくない人間が世の中にたった二人だけだと思っていたが、まだいたのに気がついた。