偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……TOMITAの朝比奈社外取締役は、お元気ですか?」

青山は話題を変えることにした。
TOMITAにいるときに、副社長に次いで世話になった人だ。

「あぁ……彩乃の親戚で元カレのイケメンね。
今はほとんどTOMITAには関わってないようだけど本業のあさひJPN銀行でがんばってるみたいだから、元気じゃない?結婚はしたと思うんだけど、離婚したんだっけ?
……どうだったか、忘れたわ」

まだ笑い足りないながらも、誓子が「余計な情報」をぶっ込みながら報告する。

「ええっ⁉︎ 彩乃は海洋(かいよう)とつき合ってたのかっ⁉︎」

社長がびっくりして叫ぶ。
彼にとって彩乃は実家の近所に住む妹のような幼なじみで、朝比奈 海洋は名門私立男子校の後輩だった。

生まれながらの金持ちというのは、自宅は広大なくせに、住む世界は猫の額ほどの狭さなのだ。

稍にはもう、だれがだれとどうなっているのか、さっぱりわからない。
とっくについていけない世界だった。

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