偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「……悪かった……稍」
息を整えた智史が稍に詫びた。
彼にしてはめずらしく一人勝手に果てたためだった。
彼の激しさにひたすら耐えた稍は、まだ荒い息をしながら、首だけ左右に振った。
「資格を取りたい、っていうのはええんや」
汗で稍の頬に張りついた髪を、智史は指でやさしく払って整えた。
「おれが教えたるから。学校になんか通うな。
おれがおまえに絶対資格を取らせてやる。
……せやけど、生活費はいらん。払わんでええ」
「でも……あたしも……一応……働いてるし……」
まだちゃんと整わない息で稍は絶え絶えに返す。
智史はなにも言わず、また稍の上に覆いかぶさった。シャワーを浴びたあとだったから、前髪が下されている。会社ではリムレスの眼鏡の奥に隠れている切れ長の鋭い目が、稍の顔を上からじーっと見つめる。
……なんか「カラダで払ってる」みたいで、イヤやねん。
稍は泣きそうな気持ちになる。
……十月になって「偽装結婚」が解消されたら、たまにはこんなふうにセックスだけする仲になるんやろか?そしたら、もし、智くんが「御令嬢」とちゃんと結婚したあとは?
稍は涙が込み上がってきそうになり、思わず目を閉じた。
智史の顔が下りてくる気配がする。
そのあとは、いつものように抱いてくれた。