偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

お局級の年齢の、課内の先輩の婚約者をかっ(さら)った由奈は現在、絶賛爪弾き中の村八分中だ。

二十人近くいる営業事務課は、女所帯である。
そんな目に遭うことくらい、重々わかっていたはずなのに。

由奈は二十九歳。
なんとしても、三十歳までに「進路」を決めたかった。ずっと憧れだった野田課長代理の結婚を阻止するためには、なりふりなんて構っていられなかったのだ。

「さっちゃん、別にあたしは康平と婚約を解消したから、辞めるわけじゃないよ」

稍は、悔しさで歯ぎしりする沙知を(なだ)めた。
なんだか沙知の方が当事者みたいだ。

もともと野田との婚約破棄がなくても、三月いっぱいで会社を退職するつもりだった。
溜まった有給を消化する日まで、あとわずかだ。

稍は大学卒業後、東京エリア限定の総合職でこの会社に入社した。
だから、ほかの会社は知らない。

< 5 / 606 >

この作品をシェア

pagetop