偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……だって、そのパールのピンキーリング、あの人と同じなんだもん」

麻琴は稍の右手の小指に視線を落とした。

……しまったぁ。なんとなく「ラッキーアイテム」な気がして、そのままつけてたぁー!

実際のところは婚約破棄するわ、偽装結婚するわで、まったくラッキーなことなんて皆無なのだが……

それでなくても、稍は出社前に家のキッチンで「八木 (こずえ)」時代に使っていた「Y」のマグボトルにルイボスティを入れていたところを、たまたま水を飲みに来た智史に目撃された。

「おまえ、それは渡辺が見てた水筒やろうが?
バレるぞ、それは持って行くな。ロハスライフで新しいの()うたるから」

呆れた目で見る智史から、すんでのところで阻止してもらった「前科」がある。

通勤のバッグはコーチのサッチェルから智史に華丸で買ってもらったプラダのキルティングトート(タブレットを入れるのにちょうどよかった)に変えたし、服も手持ちのものと智史に買ってもらったものとを組み合わせて、違うテイストにしていたのに。

……あぁ、やってしもうた。
智くんにバレたら、めっちゃ怒られるぅ。


稍は終業後、麻琴に言われるがままについて行くことになった。

< 503 / 606 >

この作品をシェア

pagetop