偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

智史は稍の身体(からだ)を気遣って、今日は出勤するのに車を出してくれた。

「しんどかったら、早退してええねんぞ?
それとも……休むか?」

運転しながらも、何度も助手席の稍を見て言う。
稍はそっぽを向いて車窓を眺めていた。


会社に着いたら、今日も隣の席だ。
稍がさりげなーく間を空けようとすると、智史が間合いを詰めてくる。

「稍、今日の昼は外へランチに行こか?
なに食べたい?なんでもええぞ」

挙げ句の果てには関西弁である。
もちろん、稍にしか聞き取れないほどの小声なのであるが。

職場にいるのに、全然「青山」に見えない。
家での「智くん」だ。

……いったい、どうしたん?

「お昼は麻琴ちゃんと社食に行きますので」

稍は平然と答える。もちろん標準語だ。

「おまえら……いつからそないに仲良うなったんや?」

智史は呆然としている。
稍は不敵にふっ、と笑った。


……「天誅」だ。

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