偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「麻琴……今晩、寄るから」
男が甘く、囁いている。
……おおっ、女の声は麻琴さんだったんだっ。
早くこの場を去らないといけないと思いつつも、知ってる名前が出てきて、稍の耳がダンボになった。女のサガだ。
「ほんとっ?……じゃあ、がんばってお料理つくって待ってる」
麻琴がはしゃいだ声を上げる。
……かわいいなぁ、麻琴さん。「女の子」になってるじゃん。
バリキャリのイメージだった麻琴の「オンナ」の部分を垣間見て、稍はしみじみ思った。
「じゃあ……早く残業終わらさないと」
……あ、まずい。外に出てきそうだ。
今度こそ、稍は踵を返した。
しかし、背中越しに麻琴の最後の声が聞こえてきた。